お中元

お中元とは、お世話になった人に対して感謝の気持ちを込めて食料品などを贈答する慣習のことです。お中元は贈る相手や時期、金額などに関するさまざまなマナーがあり、長い歴史の中で形成されてきたと言われています。

◎お中元の由来

お中元の起源には諸説ありますが、中国の旧暦に由来する説が有力です。旧暦には道教の「三官大帝」と称される3人の神への信仰が取り入れられていて、三官大帝の誕生日にあたる日が上元(1月15日)・中元(7月15日)・下元(10月15日)呼ばれていました。三官大帝のうち中元生まれの「地官赦罪大帝」は人の罪を許してくれるという言い伝えがされたことから、中元の日には贖罪のための行事が行われるようになったそうです。その行事の一環として、近隣の人たちに贈り物をしたことが中元の起源になったと言われています。

道教の教えにくわえて、仏教の「盂蘭盆 (うらぼん)」の影響を受けて、日本のお中元の慣習が形成されていきました。盂蘭盆は現在も日本で「お盆」として親しまれている、ご先祖様を供養する行事です。中元と同じ7月15日前後に迎え火を焚いて霊を迎え入れますが、地域によっては1ヶ月遅れの8月15日前後に行う場合もあります。

中元と盂蘭盆という2つの行事が合わさって、ご先祖様へのお供えものを分かち合う「共食」という慣習として広まりました。やがて故人だけでなく親の無病息災を祈って贈り物をする慣習や、商人がお得意先に粗品を配る慣習などが混ざって、今のお中元の形になったと言われています。

◎お歳暮との違い

お中元とよく似た慣習にお歳暮があります。この2つの大きな違いは、贈る時期です。お中元の時期は基本的に7月初旬~7月15日などで、お歳暮は関東では12月1日~12月25日頃、他の地域では12月13日~12月25日頃が時期の目安とされています。

時期が違うことで、贈り物の意味合いも少々異なります。夏に贈るお中元は上半期の感謝を伝える慣習ですが、お歳暮は1年間の感謝を伝えるものだとされています。そのため、お歳暮はお中元よりも金額を2~3割ほど上げた品物が選ばれるようです。

◎お中元を贈る相手

お中元を贈ること自体は義務ではないため、「贈らなければいけない相手」がいるわけではありませんが、お世話になった目上の人に対して渡すのが基本です。具体的には、家族・親戚や結婚の仲人、上司、取引先、習い事の先生などが挙げられます。また、友人や同僚、ご近所さんなど対等な立場の方に贈ることも少なくありません。

ただし、政治家や公務員などの公職に就いている人にお中元を贈るのは禁止されています。お中元を含むプレゼントは、賄賂とみなされて刑法第198条の「贈賄罪」にあたる可能性があるからです。意図せず法に触れてしまう可能性があるため、贈る相手の職業には注意しましょう。

また、お中元は一度だけでなく継続的に贈るのがマナーです。そのため、毎年のように贈る相手を増やしてしまうと、経済的な負担も大きくなります。「ずっと贈りつづけられるかどうか」を考えたうえで、礼を尽くしたい相手に絞り、心を込めて贈りましょう。

◎お中元を受け取ったら

お中元を受け取ったら、すぐにお礼の連絡をするのがマナーです。電話やメールなどでお礼の言葉を伝えた上で、3日以内を目安にお礼状を投函しましょう。

お中元は基本的に目上の人に対して贈るものです。そのため、必ずしも返礼品を贈らなければいけないわけではありませんが、日頃からプライベートや仕事などでお世話になっている人には感謝の気持ちを込めて返礼品を贈るケースも珍しくありません。

返礼品を贈る場合は、金額に注意が必要です。受け取った品物より高価なものを送ると、相手に気を使わせてしまいます。返礼品は受け取った品物と同等程度の価格帯のものを選びましょう。

お中元はお盆の時期に、家族や取引先、友人など、お世話になった相手に感謝を伝える慣習です。費用や贈る時期、のし・水引などに関するマナーはありますが、大切なのは感謝の気持ちですので、感謝を伝えたい相手が喜ぶ品を贈ってみてはいかがでしょうか。