筋肉痛と筋肉疲労

久しぶりの運動や慣れない動きをしたあとに、誰しも一度は経験したことのある筋肉痛。しかし、筋肉痛が起こるメカニズムを知っている人は少ないのではないでしょうか。ここでは、筋肉痛が起こる原因や症状について解説します。また、痛みを感じるとまではいかなくても、激しいスポーツを行ったり、普段あまり運動しない人が急にからだを動かしたりすると、疲れや倦怠感を感じることがあります。この筋肉疲労も、筋肉痛が起こる原因のひとつ。疲れにくいからだづくりのポイントを知り、筋肉疲労や筋肉痛を防ぎましょう。

◎筋肉痛が起こるメカニズム

筋肉痛とは、運動によって生じる筋肉の痛みです。

トレーニングなどで普段使わない筋肉を使ったり、同じ動作を繰り返したりすると、筋肉を構成している繊維(筋繊維)に細かな傷ができます。傷んだ箇所を修復する過程で炎症反応が生じて、ブラジキニンなどの痛みを生み出す刺激物質が生成され、筋肉痛が出現すると考えられています。

筋肉痛を発症すると、熱感や腫れを伴う痛みが生じます。筋肉部分に力を加えたり、動かしたりすると痛みを感じるため、日常生活に支障をきたすこともあるでしょう。症状が軽い場合は、運動後から数日で症状が軽減されます。

◎筋肉痛の種類や加齢との関係

一口に筋肉痛といっても、大きく2種類に分かれています。

・即発性筋痛

急性筋肉痛とも呼ばれる、運動した直後や早ければ運動している最中に起こる筋肉痛です。激しい運動をして筋肉に強い負荷がかかり、過度の緊張状態が続くと、血の巡りが悪くなるため、筋肉の代謝物である「水素イオン」がたまりやすくなって筋肉痛が起こります。

・遅発性筋痛

運動して数時間から数日後に生じる筋肉痛。一般的に筋肉痛といわれるのは、この遅発性筋痛を指します。最も遅発性筋痛になりやすいのが、下り坂を駆け下りたり、重い荷物を下ろしたりするなど、筋肉を伸ばしながら力を発揮する伸張性(エキセントリック)運動です。

「年をとると筋肉痛が遅く出る」といわれますが、実は医学的には肯定も否定もできない通説。普段あまり運動をしない人は毛細血管が発達しておらず、筋繊維を修復したり、痛み物質を取り除いたりするのに時間がかかります。年齢を重ねるとからだを動かす機会が減りがちなので、年齢に関わらず適度な頻度で運動するよう心がけましょう。

◎筋肉疲労を感じるメカニズム

長く走り続けているとだるさや疲れを感じてだんだん足が上がらなくなってくる。運動中のこのような変化は、筋肉疲労が起こることが原因です。この時からだには、筋肉の柔軟性が低下して可動域が狭まるという変化が起こっており、それがパフォーマンスの低下につながります。原因はまだはっきりと解明されていないものの、次のようなメカニズムが考えられています。

・エネルギー不足

スポーツ活動中は、多くのエネルギーを必要とします。筋肉を収縮させるためのエネルギー源として、まず筋肉内にあるクレアチン酸という物質を使います。クレアチンは筋肉にエネルギーをすばやく供給しますが、10秒足らずしか持ちません。

次に筋肉や肝臓に貯蔵されたグリコーゲンをブドウ糖に分解して、エネルギー源として利用します。しかし、その貯蔵量は少ないので、すぐに使い果たしてエネルギー不足に陥ってしまい、筋肉を動かしづらくなります。

・疲労物質の蓄積

運動中に体内のエネルギー源を使ってからだを動かすと、その過程で疲労物質がたまります。

・運動不足による筋肉の緊張

反対に、身体を動かさないことで疲労が起こる場合もあります。たとえば、バスや車に長時間同じ姿勢で座っていたら、腰や肩が痛くなったという経験があると思います。体を動かさないでいると、血行が悪くなり、筋肉が緊張しっぱなしになって疲れがたまります。また、疲労物質が流れにくくなるため、慢性的な疲労へとつながります。

◎筋肉疲労を予防するポイントは「栄養補給」と「血流促進」

疲れにくい身体づくりをするには、バランスのとれた食事を心がけることが大切です。エネルギー源となる炭水化物やたんぱく質を摂取するとともに、疲労回復を助けるビタミンB1やビタミンD、カルシウム、アスパラギン酸、亜鉛などを積極的にとりましょう。

血流がよくなると疲れがたまりにくくなり、疲労回復も早くなります。ストレッチをして筋肉をほぐす、シャワーですませずお風呂で全身を温めるなどして、血行を促進しましょう。

どうしてもつきものになる筋肉痛や筋肉疲労。日々のからだづくりや、ケア・休息を意識し、疲れにくい身体づくりに励みましょう。