黄砂とPM2.5

この時期、花粉症と同じくらい厄介なモノ。

黄砂とPM2.5、どちらも天気予報やニュースなどで耳目にする機会が多い用語だと思います。まずは、黄砂とPM2.5それぞれの概要と特徴について紹介します。

黄砂とは

黄砂とは中国西部のゴビ砂漠、タクラマカン砂漠、黄土高原などから、土壌や鉱物粒子が飛んでくる現象、または飛来する土壌や鉱物粒子そのもののことを指します。

黄砂は砂塵嵐などの強風によって数千mの上空にまで舞い上がり、偏西風によって日本に飛来して、大気中に浮遊したり地表に降下したりします。そのことを、黄砂現象と呼ぶこともあります。

黄砂はほぼ年間を通して日本各地で観測されますが、特に毎年2~5月の春先に多く飛来し、4月頃にピークを迎えます。シーズンが決まっている理由は、この時期になると中国の砂漠地帯の積雪や凍土が溶け、黄砂が風に巻き上げられやすくなるためです。その後、6月頃には中国大陸の発生源地域に雨が降り、徐々に収まってきます。黄砂は従来、自然現象の一種と思われていましたが、近年は家畜の過放牧や農地転換などによる土地の劣化との関連性も指摘されています。

PM2.5とは

PM2.5とは、大気中に浮遊している直径が2.5μm(1μm=0.001mm)以下の非常に小さな粒子のことです。微小粒子状物質とも表現されます。

PM2.5は、燃焼などで直接排出される一次生成粒子と、大気中の化学反応によって生成される二次生成粒子のふたつに分けられます。一次生成粒子と二次生成粒子は、どちらも季節や気象条件など、さまざまな要因が合わさって発生します。また、発生する場所は中国に限らず国内でも観測されていますので、PM2.5は場所や季節を問わず、一年中発生しているといえます。

黄砂とPM2.5はそれぞれ別物で、関係がないように思えますが、実は大きさが2.5マイクロメートル以下であれば黄砂もPM2.5に含まれます。

黄砂の粒子は石英や長石などの造岩鉱物、雲母、カオリナイト、緑泥石などの粘土鉱物を含んでいます。その大きさは1~30マイクロメートルといったところですが、日本に到達する黄砂の粒の直径は4マイクロメートル前後の物質が多いようです。

PM2.5は先にご説明したとおり、2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質のことです。大きさによって分類された名称なので、直径2.5マイクロメートル以下であればどんな物質でもPM2.5と呼ばれます。

PM2.5の組成は、主に炭素成分、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、ケイ素、ナトリウム、アルミニウムなど、さまざまありますが、その中には微小な黄砂が含まれていることもあるのです。

健康への影響

黄砂の健康被害としては、目、鼻、皮膚などのアレルギー症状のほか、気管支喘息や気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患との関連が指摘されています。また、黄砂の飛来と心筋梗塞による入院や発症増加との関連を示す報告もあります。心筋梗塞など循環器疾患につながるメカニズムはまだ詳細にわかってはいませんが、黄砂による健康被害は幅広い可能性があるのです。

PM2.5の健康被害も、黄砂と同じように呼吸器系への影響が目立ちます。PM2.5の濃度が上昇すると気管支喘息や気管支炎などの呼吸器症状が表れる、または呼吸機能の変化が起きる可能性があるのです。また、肺がんのリスク上昇や、循環器への影響も懸念されています。特に、子供や高齢者、呼吸器系または循環器系の病気を持っている人は、PM2.5の濃度上昇に気をつける必要があるでしょう。

健康被害を防ぐための対策

最後に、黄砂とPM2.5による健康被害を防ぐための対策を見ていきましょう。屋外にいるときと屋内にいるときで、有効な対策は変わります。

◎屋外にいるとき

黄砂の飛来情報が出たときやPM2.5の濃度が上昇したときは、その吸入を減らすため、屋外での長時間の激しい運動はできるだけ減らしましょう。例えば、マラソンなどの呼吸器への過度な負担が長時間続くような運動は、避けたほうが無難です。

また、外出時のマスク着用も忘れないようにしてください。不織布マスクでも一定の効果はありますが、気になる方は防塵マスクをつけるのがベストです。

◎屋内にいるとき

窓を開けると、黄砂やPM2.5が屋内に侵入します。黄砂やPM2.5が多い日は、窓の開閉や換気は必要最小限にして、外気の侵入を少なくしましょう。

空気清浄機の使用は、黄砂とPM2.5を除去するために効果的です。黄砂やPM2.5を取り除くには、0.3マイクロメートル以上の粒子を捕集できる空気清浄機を用いるのがおすすめです。

窓を開けなければならないときなどに、窓のそばに空気清浄機を置いて積極的に稼働させれば、黄砂やPM2.5が室内にとどまることを抑えられます。