いずれアヤメかカキツバタ

ピンと背筋をのばしているかのような佇まいと紫色の気品があふれる花。
梅雨の音連れを告げる季節の便りとして愛されてきたアヤメが咲き始めます。
外側の花びらの中央にある網目模様が「綾目(文目):あやめ」の名前となったと言われる多年草です。

どちらも美しく優劣がつけがたいことを意味する「いずれアヤメかカキツバタ」ということわざがあるようにアヤメとカキツバタは似ていますが、見分け方は咲く場所の違いにあります。
アヤメは山野に、カキツバタは水辺に生えます。さらに似ている花にハナショウブがあります。
こちらは花びらの根元が黄色くなっているのが特徴です。

漢字で「菖蒲」とかいて、アヤメともショウブとも読むのは、かつての人々もアヤメとハナショウブを混同していたためです。アヤメもカキツバタもハナショウブも植物学的にはアヤメ科に属します。端午の節句の「菖蒲湯」に用いる葉っぱのショウブはショウブ科に属します。

実はカキツバタは愛知県の花なんですよ。在原兼平が現在の知立市八橋を訪れた時、妻を恋しく思う心情を『らころも つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞおもふ』と句の頭に
「かきつばた」の5文字をいれて詠んだことは有名な話です。

どれもすっと伸びた葉をもつのは、元気一杯がかんじられる素敵な植物ですね。
植物も人間もピンと真っすぐで姿勢が良いのは恰好がいいものです。